ヤズコルヤズカマク

ヤズコルヤズカマクとはケチュア語で「行って目にして帰ってきたもの。目撃者…火山の内部を見た者。翼をもつ赤い存在…自らの弱さを全て焼き払った…を意味する(「赤の自伝」より)

出所ヤリ

性的に逼迫気味な今日この頃。
刑務所生活の後遺症でうっかり聖人になりかけてしまったボクはかつてあれだけ豊富に取り揃えていたエロに関する知識を全て失ってしまってた。(絶望)
解脱なんかして手遅れになってしまわぬようボクは二人の友人にお薦めのエロサイトの情報を乞うた。

間髪いれず、一人は「ここなんかが無難かなぁ」とあるプラットホームを教えてくれた。そのサイトにはなんと86568もの作品が。
ちょっとちょっと…ゲイの無難って多過ぎくねえ?広過ぎくねえ?体がもたんぜ。
もう一人は、性癖がマニアック過ぎて(詳細は伏せる)、自分の好みを包括したサイトなどはないと少し恥ずかしそうに、けれどもどこか誇らしそうに、そんな含みのある文体で返答してきた。

色々が正しい。

 

86568の動画をざーっとチェックしてみた。ほとんど見たことがないものばかり。すごすぎる。
一年半で作品がほぼ入れ替わるアダルト業界。このスピード感。そしてきっとすぐにこの作品群も過去にしてしまう男の業。

くらくらする。

 

選びきれないボクはくらくらしながらハッテン場に行った。


こりゃ相手にされないだろう確実な、顔よしガタイよし、まるでエロ爽やかなアスリート系のゲイビデオから抜け出したような完成度の高い若者がアプローチしてきた。人生は謎である。
何でオレなんかを?と疑問を呈する自分を心の中で殴って気絶させる。勢いよく、かつ丁寧にまぐわおうと努めた。しかし「搾取」と言う言葉が頭を掠め邪魔をする。

「サシよりも複数の方がいいんじゃない?」と個室の鍵を開けようとするボクにはまだ躊躇があった。「二人だって複数じゃない?」と彼はボクの腕を掴む。

ボクは遠慮を振り切った。ふれあう肌は瑞々しい桃の実を思わせた。なぜだろうザーメンも桃の味がした。驚きながらも納得していた。
アフタートークで「いくつ」とは訊けなかった。
そそくさと、できればクールに見えればいいなあと思いながら立ち去った。

シンプルではいられない。
複雑を抱え、折り合う…
これを最後の仕上げに諦めようと思っていたのに…ままならない。(知ってはいたが)。

まあシラフでもヤレることを確認できたということでヨシとしよう。

 

f:id:cubu:20230908175016j:image

もっとほっこりしたエピソードでブログ再開したかった…

 

もうほとんど令和のキリスト

 月末になると金策に苦しみSOSを出してくる友人がいた。悲しいかな過去形の友人だ。言われた額を何も言わずに貸していた。翌月頭に返してもらい、また月末になると泣きついてくる。そのルーティンがしばらく続いた。

 毎回「お願いします!」と90度に頭を下げる彼に、「金を貸すと人は消える」この寂しい現実を払拭してくれて…「まだまだ人は捨てたもんじゃない」そう思わせてくれて…「こちらこそ返してくれてありがとう」と心の中、手を合わせ感謝の気持ちで貸していた。
 彼が消息を断つ日、いつもよりも多めの額を無心して来た。ためらいがなかったといえば嘘だ。だけどボクは何も言わずに求められたまま差し出すという美学を貫いた。

 以後、彼からの連絡は途絶えた。

 「どうしてる?feat.お金返してほしい」

 「元気?feat.返金まだですか」

 そんなメッセージを送る自分も嫌になり、そのうち、彼の番号はつながらない番号へと変わった。

 「すいか」というドラマで小林聡美が演じる主人公が「わたし、お金貸す人いないんです。34になるまで人にお金を貸したことが一度もないんです」といってやや強引に借金を押し付けるシーンを思い出した。

 貸そうと決めたのはボクだ。貸したのもボクだ。奪われたわけじゃない。返ってこなかった現実ごと受け止めなければいけない。別れを汚してしまった責任の一部は自分にある。信じるって、もうほとんど信じたいに近いことなんだよなあ。お金なんかに負けないって信じたいんだけどなあ。みんなじゃないだろうけど、一人くらいは見つけたいなあ。

 口にした言葉が裏切られて嘘へと変わる。それまでは幸せだった。それでいいんだと思う。

 ドラマの終盤、「苦しい。苦しいよー」と泣きながら逃げる3億円横領犯役の小泉今日子に彼が映る。また会える日は来るのだろうか。ボクは会いたいなあ。返してくれたらまた貸すから会いたいと思う。会えることをボクは信じる。信じる力がボクを生かす。

 

 

f:id:cubu:20230820151509j:image

あの時の「ありがとう」はきっと「ごめんなさい」の聞き間違えだったんだろう

手放される力、ある日の二度寝に誓う

 有無をも言わさないとはこのことだ
 ギリギリではない
 並んだ数字は遅刻の覚悟をつけざるを得ない組み合わせだった
 暴力的な目覚めはボクにスマホを掴ませる
 躊躇よりも速く会社の番号を押す
 「10分遅れます」と伝える
 理由は言わない
 今は必要ない
 謝り方は着くまでに考えればいい

 会社への連絡をすませてしっまえば部屋には清々しい朝があらわれる
 シーツの肌触りが心地いい
 ようやく存在感を取り戻した朝日に目がくらむ
 「もう10分遅れることができる」
 ボクはボクにやさしい声を(それがたとえどんなに小さいものであったとしても)聞き逃さない
 二度寝への誘いに抗わない
 時間厳守、貞操観念、そして早起き
 この三つがない世界だったらオレの人生もっといいとこまでいってただろうなあ
 そんなことを想いながら意識は混濁していく

 安心安全あっての自己実現
 こうして時間を失っていく
 こうして期待を失っていく
 軽やかな生活とはこういうことだ

 

f:id:cubu:20230820151636j:image

 南に向いてる窓を開っけー♪たら寒い季節になりました。カーテン買ってリネンも冬篭り仕様に

 

ヒーローはもういない

 『コレクティブ 国家と嘘』という映画を観た。ルーマニアの政府の腐敗に対峙する者たち(挑む者たちと言った方がいいのかもしれない)を追ったドキュメンタリーだ。

 生活困窮者支援を生業にしてこの一年、政治色の強い人達と接する中で「正義」について考える機会も多く、こんな辛気くさい映画にも日曜の朝早くから並んで観に行くようになった。去年、同じような政治ドキュメンタリー映画『なぜ君は総理大臣になれないのか』を観て政府の不甲斐なさ(不誠実さ)を競うなら日本がピカイチだろうと確信していたけれど、ところがどっこい世界は広い。絶望の闇は底なしだ。ルーマニアの方々も大変なんですね。泣けてきた。

 見終わった後、一緒に行った病院勤務のソーシャルワーカー仲間に「医療従事者としてどう思う?」と思わず聞きそうになった。傍観者になろうとする自分に気づきやめた。これは医療の問題ではない。国と名のつく場所に生きる全ての人間の問題なんだ。

 ヒーローはもういない♪と遺族の好きだったと思われる曲のカットアウトで終わる映画のエンディング。サビの続きは誰が歌うのか?ヒーロー不在の現実社会。まだ見ぬヒーローが現れるのをただ待つだけなのか?人生はそんなに長くないだろう?ヒーローなんてもういない。これって実は救いなんじゃないのか?若いやつらに景気のいいエンディングを語ってやれる世代になってやろうぜ、オレたちは。

 

f:id:cubu:20230820151750p:image

満席だったけど、これ見にくる層ってマイノリティなんだろうまあ…やめとこっ。

へりくつ

 努力、忍耐、根性、その手の言葉が嫌いだった。子供の頃からそうだった。苦労への耐久力が人より劣っていたせいで苦労の絶えない幼少期だった。まあ比べても仕方ない。体質だと受け入れてた(潔さが社会性の余白を埋める)。

 「若い頃の苦労は勝手でもしろ」という大人に「だったらブサイクと蔑まれた人はみんな心清き人にならないと話が合わないのではないか?でも現実は…」と詰め寄る可愛げのない子供だった。ボクは「貧乏が生きる知恵を育てる」なんて言いたくないし、誰にも言わせたくない。

 はばかりを失くしたのは大人になってから。「必要のない苦労はすべきでない」。ためらわず自己主張するようになった。正直はいつも後からやってくる。

 だからって生きやすくなんてならない「嫌い」が「できない」に変わっただけだ。正直だって、不正直だってしんどい。とてもしんどい。人生はしんどいのである。

 

f:id:cubu:20230820151820j:image

「やれジムだ」「やれコスメだ」そんな自分磨きに余念のない(そして根こそぎ勝ちとっていく)努力するゲイ達を横目に、それでも暴飲暴食で好き勝手を貫いて生きていくのって、それはそれで勇気がいるんだよね。誰もわかってくれないだろうけど。

 

ヒーロー

 先週末、警察官に捕まった。

 ここ数ヶ月、スリップ(薬の再使用)が止まらず、もう捕まるしかないかなあと半ば諦めていた矢先だった。

 その日もいつものように出会い系のアプリに掲示されているアゲ系の書き込みにアタックし、Wic/経由で会うことになった。待ち合わせに指定された場所はシーサイド品川駅から歩いて20分ほどにあるローソンだった。海に近いんだろう。凍えながらあるいた。待つこと一時間、23時半を過ぎ最終電車も気になりはじめ、きっと冷やかしだろうと帰ろうとしていたところにマンションの部屋番号が送られてきた。「部屋は暗くていいか?」「もう先に食っている?」などのあまりやり取りしたことのないようなメッセージが送られてきたときに気づけばよかった。いや、まっとうな判断力なんてもうなかったんだろう。あまりの寒さに耐えきれずコンビニのトイレですでに少し入れたボクは軽くキマったまま指定されたインターフォンの部屋番号を押していた。

 予告通り部屋は薄暗いワンルームだった。目つきの悪い男がソファーに座っていた。窓際に置かれたぬいぐるみを釣り合いだなあと思った。帽子をとってほしいとその男はボクに言った。ボクはこういうときにはいつもキャップスタイルなのである。素直に応じた。「若くみえるね」とその男は言った。調子に乗りやすいボクは「これでも五歳サバ読んでます」と誇らしげに答えた。

 「もう入れてるんですか?」と聞くと頷くから「じゃあボクも入れますね」と伝え、ユニットバスで10メモを入れた。鏡に映るのは懐かしの薄っぺらい自分。3ヶ月かけてつけた筋肉は跡形もない。すこし手間取ったが無事静注できた。ガツンと来た。ふらふらした頭と体で男に近づき触れようとしが、男はボクを諌め、ベッドに座らせた。一息ついて「どんな仕事してるの?」「危ない人じゃないよね?」「ひとり暮らし?」など質問してきた。それでもボクは気づかなかった。しゃべる方にキマるタイプなのかななんてのんきに思っていた。唐突に「警察官なんだ」と聞こえた。見上げると警察手帳らしきものが見えた。どんな反応をしていいのかわからなかった…というかどんな反応をしたのか覚えていない。続けざまに「このマンション警察官の寮なんだよね」といわれ「ああ、終わった」と思ったことだけ覚えている。

 「動かないでね」と落ち着いた(だけど有無を言わさない)口調での指示にボクは素直に従った。慣れた手つきではめられる白い手袋がボクをさらに動けなくさせた。白い手袋をはめたその腕はサクサクとなんの躊躇いもなくバッグから財布を取り出し、中身をチェックしていった。どんな仕事してるの?」「危ない人じゃないよね?」「ひとり暮らし?」…さっきと同じ質問がまったく違って聞こえた。

 「調書取ってるわけじゃないから正直に言ってね」と言われたからではなく、免許証を見ながら「@@さんって言うんだ」と名前を呼ばれたせいで誤魔化せなくなった。聞かれるまま前科の話、刑務所の話、治療の話、障がいの話、仕事の話…事実を語った。

 「オレにどうしろっていうんだ」と男は言った。ボクは「見逃してほしい」とは言えなかった。長くも短くもない静寂を破ったのは男の方だった。「ただってわけにはいかないからな」。手垢のついた言葉が聞こえた。「そういうことか」と合点がいき、安心した。言い渡された金額は安くはなかったが支払えないほどの額ではなかった。コンビニに戻り金をおろし、指定された金額を受け渡した。「金は力だ」とここまで実感したのははじめてだった。

 「もう会うことは無いだろうけど」その男の口にした捨て台詞にボクは何も答えなかった。終電も往ってしまった駅へと向かうキマったままの体はあのとき何に震えていたんだろう。

 警察学校でゲイははじかれると聞いたことがある。あの男はゲイだったんだろうか。そもそも本当に警察官だったのだろうか。はじめから罠だったんだろうか。ヒーローと名付けられたあの男のアカウント名はどういう意味なんだろうか。いまさら確かめようとは思わない。

 あれから一週間がたち、もう体から薬はぬけている。(1キメ1射精の継続は途切れてしまった…)だけどあの帰り道を今もまだずっと歩いている気分だ。どこへ向かっているのだろうか。辿り着ける場所なんてあるんだろうか。

 

f:id:cubu:20230820151937j:image

やわらかな傷痕

 

キラキラ教

行きたい
食べたい
会いたい
全部は無理だ
今日は何して遊ぼう?
今日はどれを選ぶ?
今日はどれを諦める?
不自由なクエスチョン
時間はいつも有期限
がっかりなボクは不機嫌
苦手な優先順位
選択に護られた豊かな街での生きづらさ
つかんだ希望の光はクスリ一択シンプルライフ
Without 煩悩
No more 懊悩
覚醒剤って大変じゃないですかって?
わかってないですね
アディクトになるってカルト宗教にハマるみたいなもんなんですよ
神様が白い結晶だってことですよ
アニミズム精神に根ざしたキラキラ教なんです
神様、わたしにお与えください
今日も選ばなくていい自由を

 

f:id:cubu:20230820152001j:image

ネーバーエンディングジャーニーですね