ヤズコルヤズカマク

ヤズコルヤズカマクとはケチュア語で「行って目にして帰ってきたもの。目撃者…火山の内部を見た者。翼をもつ赤い存在…自らの弱さを全て焼き払った…を意味する(「赤の自伝」より)

ボクの彼氏の話〜「彼氏をつくる」と書いた念書を貼って破いて、貼って破いて…繰り返した末の顛末〜

私事ではあるが、彼氏ができた。 境界性人格障害の彼氏ができた。ちなみに松沢病院で診断されたっていうからガチなやつだ。 はじめて行ったゲイバーで知り合って、次の日にデートしてからの三連泊。この辺まではよくある話だが、さすがはボーダー、一週間後…

レターフロムプリズン

お元気ですか。 仮面おめでとう。 良い年越しだったんじゃないでしょうか? 人のグッドエピソードはいいね。ほっこりする。 なかなか楽しみなど少ない毎日でしょうから、ボクからもと思い最近のいいことを伝えようと最近のいい記憶を思い返してみました。 そ…

今を生きる

若者は感謝をしない 若者は感謝をせずに生きていく それでいいと思う それがいいと思う 過去の誰かの親切でなく、未来の希望への一挙集中主義的態度 常に前だけ、入り口だらけの毎日 明日にのみ今のすべてを賭ける姿は逞しく頼もしい 感謝じゃ前に進めない …

手紙

元気ですか。お手紙ありがとうございました。ニヤニヤしながら読みました。 なかなか手紙が書けなくてすみません。 引越しをしたり、新しい仕事を始めたりして慌ただしくしておりまして… 世の中では無惨にも大きな戦争が始まり、その戦争が終わる前にまた無…

WANTOK(ワントク)

だんだんと暮れていく薄暗い部屋もう顔も見えない明るくしませんか?と言いたい言えない暗さに気づいてないのかな沈黙ときより水の中から湧き出てくる小さなあぶくみたいな語りボクは聴くいや、ただ言葉が出てこないだけうなづくしかできないはっと気づいた…

晴れた日の薄暗い精神

仮釈が終わった。 罰を乗り越えた経験を「どうだオレってすごいだろう」ってたいそう高らかに誇るのも御門違いだ。「晴れて自由だね」と喜んでくれる同僚に「また使ったら捕まってしまう可能性があるからそんなに嬉しくないし、安心もできない」と返したら呆…

マイノリティとしての品格

「前科」と「覚醒剤」から放たれる闇のオーラが強すぎてボクの中の「HIV」と「性的指向」のアイデンティティの影の存在感が薄れる。ハッキリ言ってほとんど忘れている。 そう言えばオレってHIVとセクマイの当事者だったなあって思うのは…いつだっけ? 処方薬…

命題

「リハビリも頑張ったんだからもっと減刑せよ」 「せっかく構築された信頼関係がダメになる」 そういう文脈で覚醒剤使用の非処罰化を世にアピールしていくことの白々しさ。そしてそういう言葉しか通じない世間の幼稚さ。 「1」という答えに出会うには、そこ…

出所ヤリ

性的に逼迫気味な今日この頃。刑務所生活の後遺症でうっかり聖人になりかけてしまったボクはかつてあれだけ豊富に取り揃えていたエロに関する知識を全て失ってしまってた。(絶望)解脱なんかして手遅れになってしまわぬようボクは二人の友人にお薦めのエロ…

もうほとんど令和のキリスト

月末になると金策に苦しみSOSを出してくる友人がいた。悲しいかな過去形の友人だ。言われた額を何も言わずに貸していた。翌月頭に返してもらい、また月末になると泣きついてくる。そのルーティンがしばらく続いた。 毎回「お願いします!」と90度に頭を下げ…

手放される力、ある日の二度寝に誓う

有無をも言わさないとはこのことだ ギリギリではない 並んだ数字は遅刻の覚悟をつけざるを得ない組み合わせだった 暴力的な目覚めはボクにスマホを掴ませる 躊躇よりも速く会社の番号を押す 「10分遅れます」と伝える 理由は言わない 今は必要ない 謝り方は…

ヒーローはもういない

『コレクティブ 国家と嘘』という映画を観た。ルーマニアの政府の腐敗に対峙する者たち(挑む者たちと言った方がいいのかもしれない)を追ったドキュメンタリーだ。 生活困窮者支援を生業にしてこの一年、政治色の強い人達と接する中で「正義」について考え…

へりくつ

努力、忍耐、根性、その手の言葉が嫌いだった。子供の頃からそうだった。苦労への耐久力が人より劣っていたせいで苦労の絶えない幼少期だった。まあ比べても仕方ない。体質だと受け入れてた(潔さが社会性の余白を埋める)。 「若い頃の苦労は勝手でもしろ」…

ヒーロー

先週末、警察官に捕まった。 ここ数ヶ月、スリップ(薬の再使用)が止まらず、もう捕まるしかないかなあと半ば諦めていた矢先だった。 その日もいつものように出会い系のアプリに掲示されているアゲ系の書き込みにアタックし、Wic/経由で会うことになった。…

キラキラ教

行きたい食べたい会いたい全部は無理だ今日は何して遊ぼう?今日はどれを選ぶ?今日はどれを諦める?不自由なクエスチョン時間はいつも有期限がっかりなボクは不機嫌苦手な優先順位選択に護られた豊かな街での生きづらさつかんだ希望の光はクスリ一択シンプ…

ディープインパクト

自分という存在の生きながらの解体作業。今の日本社会でHIVになるということはそういうことだ。大袈裟ではない。実際にそういう日々がしばらく続いた。確かなるディープインパクト。 だが人は強い。時間を味方につけた者は最強だ。回復の名の下、バラバラの…

フィールドアイデンデンティ

引っ越しの多い人生を送ってきました。 自分には地に足をつけた生活というものが、見当つかないのです。自分は九州の商人の家に生まれましたので幼少時から進学のために家を出るまで一度も引っ越しをしたことはありませんでした。転勤の多い親の影響でこうな…

母という字は難しい

母という字は難しい。どうしても巧く書けない。 母の日のプレゼントは難しい。いつもうまく選べない。 母の好きなものってなんだろう。いまだわからない。 なぜだか女子の友達が多かった小学校時代。いち早くその違和感に気がつき、気に病んだ母は、ボクに男…

直観でもって法則を変えろ

若者は言った。「できるだけ長く生活保護をもらって生きていきたいんです」と。ボクは「何言ってんの?ダメだよそれは」と即座に否定した。受容、自己決定、非審判的態度完全無視。PSWとしてはナンセンスなアプローチといえる。「まあそれもいんじゃない…こ…

テトリスがキマるように

スマホが震える。見知らぬ番号から着信だ。好奇心が強いのでためらわずスライドで応答する。見覚えのない若い男の声が「新宿署、生活安全課の佐藤です。淘汰さんですか」と話す。今ボクはクスリをやっていないし警察から連絡を受けるいわれはない。うしろめ…

後天性ADHD

オンラインミーティングでモニターに映る参加者たち。与えられたスペースは皆に平等。その枠にボクはおさまれない。しゃべってもいないのに飛び出してしまう。比喩ではない。ほんとそのまま枠から消えてしまうことしばしば。落ち着かなさの見える化。つらい……

ホームフル映画『ノマドランド』

『ノマドランド』という映画を観た。 亡き夫との思い出を宿したバンに乗り、日々を過ごす女性の一年を追った映画だった。大きな事件は何も起こらない。悪い人も出てこない(というか彼女の周りには親切な人ばかりだ)。ホームレス支援の仕事をはじめる一年前…

記憶を消してこそ酒

さすがに飲む量は減ってきたが、それでもビール、焼酎、酒、ワイン、リキュールに眞露、紹興酒、なんでもござれだ。二日酔いなんて他人事。どれだけ飲んでも酒に飲まれることなんてなかった。ボクは笑い上戸で話し好き、いい酒の人間だ。アルコールに対して…

人生はナクシモノでできている

ここ何日か社用の携帯電話が見当たらない。 なくしたわけじゃない。 なくしたわけじゃない。 なくしたわけじゃない。 見当たらないだけで、なくしたわけじゃないんだ。 見つかれば、なくしものはなくしものではなくなる。 そう自分に言い聞かせる。 わかって…

淘汰の穴、もしくは隙間

あえて視野狭窄になる その方が生きやすいからだ 必要のない機能はだんだんと淘汰されていく そのうちそれがあたりまえになる ある部分が研ぎ澄まされていく それは生き延びるため 環境への積極的適応、つまりは最適化 淘汰の穴を埋めるように新しい感覚が身…

活動家未満のソーシャルアクション

ソーシャルワークにはソーシャルアクションとよばれる技法がある。ざっくり言うと、地域社会の理不尽に対してそれってちょっとおかしいだろうって物申し、変えていこうとする取り組みのことである。(ざっくりすぎてすみません)。 ただしソーシャルワーカー…

押しの子

中学生の頃、塾に馴染めないボクに過保護な両親は家庭教師をつけた。 近所の大学に張り出された募集の張り紙には「癖のある子供です」と但書があったそうだ。(あとになってその家庭教師の先生が教えてくれた)。 親も子育てに苦労したんだと思う。 我慢がで…

ボクが精神科に通う理由

今日は月に一度の精神科受診だった。ボクがこのクリニックに通いはじめてもうどのくらいになるんだろう。 出所時、就職先の受け入れの条件として精神科への通院が義務づけられた。出所したのが2018年の夏だったから、かれこれもう三年になる。 通院に抵抗感…

刑務所で彼氏ができた話

刑務所にいた頃、日記を書いていた。二年間、毎日欠かさずに書いた。その日の出来事、読んだ本、覚えておきたい言葉、手紙の下書き…しがみつくように書いた。あの頃、自分の支配下に置くことができたのは書くことだけだったから。もちろん刑務所なんで定期的…

真冬の夜廻り

ボクらの夜回りでは夜の都心を二時間ほどかけて歩く。とても疲れる。持ち歩く食材の重さのせいではない。だって配り歩いて荷物は減りながらも肩の重さは変わらない。ちっぽけな自己満足をひとつ配り、大きな罪悪感をひとつ受け取る。 路上で寝ている人へなん…