ヤズコルヤズカマク

ヤズコルヤズカマクとはケチュア語で「行って目にして帰ってきたもの。目撃者…火山の内部を見た者。翼をもつ赤い存在…自らの弱さを全て焼き払った…を意味する(「赤の自伝」より)

2020-12-01から1ヶ月間の記事一覧

いつかの収監ダイアリー その3

釈放が近づくとみな本面に呼び出される。本面とは保護観察所の職員との委員面接のことだ。この面接から4週目の木曜に仮釈予定者は転房となる。釈放間近な受刑者専用舎房に移る栄光の花道が開けるというわけだ。 大ちゃんがいる。前例に習い本面から四週目の…

いつかの収監ダイアリー その2

獄友の大ちゃんが訊いてくる。 「CD4いくつなん?」 CD4とは免疫の状態を確認する数値のひとつでHIVの快復の目安となる。健康な人だと1000近くあり、ここ刑務所の病舎にいるHIV患者はだいたい500前後を推移している者が多い。200以下になると医療刑務所行き…

いつかの収監ダイアリー その1

空が高い。「ここ最近でいちばん暖かい」が日々更新されていく。気づけば三月だ。「一月には仮釈もらって出てやる」そう豪語していた大ちゃんがまだここにいる。 「一月に出るんじゃなかったっけ?」とボクはきいた。 「全然ムリみたい。6月くらいになりそ…

変わってしまった思い出

彼が亡くなったと聞いたとき、自死だと思ってしまったわけは、ボクの人生において彼ほど生命力に溢れた人と出会ったことがなかったからだ。病気でも事故でも、ましてや運命でもない。彼から生を奪うことができるのは彼自身しかいない。そのくらいエネルギッ…